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自転車のフレーム設計方法

自転車のフレーム設計方法みなさん自転車のフレームはどのような設計方法を用いていますか?

わたしは自転車の製作を職業としたことはありませんし構造力学の計算などもしていません、だが何か問題が起こった時その原因を考えたり、解決法を見つけ出すことの体験が役に立ちます。たまたま過去に石油ショックを体験した時に、自転車は世界で一番エネルギー効率の高い乗り物だと言う文献を見たのがきっかけて興味を持ち趣味として自転車の創作活動をはじめました。

自転車のフレームの設計の教科書とかマニュアルというようなものがあるのでしょうか?
ネッドで検索してみても設計方法という情報は見当たりません。素材の物性とかロードバイクに使われるCr-Moチューブのデータはあります。

設計者は、過去に成功した例の設計計算書や設計図を通して「リバースエンジニアリング」という手法で先人から多くのものを学ぶという考え方があります。

この言葉は知的財産権との関係で時として悪いイメージで語られることがありますが、設計はこの手法で先人から多くのものを学ぶものといえるのではないのでしょうか。

例えばロードバイクを例に取るとスケルトン図とチューブのデータは容易に入手することが出来ます。
このデータから断面二次モーメント(I)を計算することは簡単に出来ます。一方、素材の弾性率は近似値として理科年表などから参考データを取り出します。

Cr-Moを例に取れば密度が7.9、弾性率は207Gpという値が出ています。一方、自作のカーボンチューブは密度が1.475、弾性率は120Gp程度のものを作ることが出来ます。

構造力学における片持ち梁という基本の公式には、支点間距離(L)の片側に、ある荷重(P)をかけたときどれだけ変形(δ)するかという場合は式は1を利用します。
自転車のフレーム設計方法_d0156782_12352679.jpg

       δ=P*L^3/48*E*I

という簡単な式で求めることが出来ます、近似値を求めるなら十分な精度といえます。
両端支持梁の場合は3を利用します。分母の48が3に変わるだけです、この差には16倍の開きが両端支持梁と片持ち梁にあるということです。換算式 1kgf=9.80665N (例)81.6kgfのときは、800Nで行います。

       δ=P*L^3/3*E*I

自作のカーボンチューブの弾性率もこの式を用いて算出します。具体的にはある長さの供試体に間隔をおいた支点間距離(L)の中央に荷重(P)を加えダイヤルゲージで撓み量を測定することで、この式から逆算して弾性率(E)を求めることが出来ます。断面二次モーメント(I)はノギスで採寸して公式から求めます。

これ等の値から弾性率(E)と断面二次モーメント(I)の積を素材のインデックス(EI)とする相対値として扱います、このようにすると弾性体であれば素材の種類ごとに考える必要がなくなります。

お気づきになったと思いますがCr-Moのデータは豊富にあります、それを利用して組み立てたロードバイクをカーボンに置き換えて作るとすればインデックス(EI)が同じような数値になるようなことにすれば作ることが出来ます。この方法もある意味において「リバースエンジニアリング」といえるのではないかと思います。

この方法が簡便な設計の目安をつけるのに役立つ手法として利用しています。これなら関数電卓があれば簡単に計算が出来るので素人思考の一つとして役立つチェック法だと思います。繰り返し計算をするのであれば表計算ソフトにプログラムを組み込んでおくとか、フリーソフトを利用するのがよいと思います。

このようにして、目安をつけて試作モデルを制作し、壊してみることで、必要な設計の役に立つデータを取ることで解決しているのが最初の段階のトライアルモデルあるいは破壊検査モデルということになります。この結果を基に壊れる一歩手前で安全に乗れるものが作れることになります。

これからはじめる世界最軽量のミニベロに挑戦するテーマではまずフレームをCr-Moを例に取れば密度が7.9、弾性率は207Gpとあるように、これをカーボンチューブ密度が1.475、弾性率は120Gpとしたとき、弾性率が低い分、断面二次モーメント(I)を大きくすることで解決できます。カーボンも、オートクレーブで架橋することと素材を選択すればCr-Moと同等の弾性率が207Gpあるいはそれ以上のものも制作可能です。

この場合Cr-Moを密度が7.9、カーボンチューブ密度が1.58とすると同じフレームを作ると1/5の重量で作れることになります。ちなみにCr-Moのフレームが1600gとすると320gというように超軽量のフレームが計算上作れるということになります。このようなアプローチの仕方を素人思考いうことにします。

よくプロの真似をしたら成功するだろうと考える人がいますがプロにはプロのやり方があり、設備とか技術を同じ物にすることは出来ません、素人には設備とか技能を必要とする方法を追いかけても実現できません。実現可能な発想の思考が生まれて初めて実現の可能性が見出すことができるようになります。この考えることの楽しみこそ趣味の醍醐味と言えそうです。



では本職の自転車メーカーではどのようにしているのだろうかと思い、調べてみました。

モデリングはCAD を使うのが一般的なようで、この結果をFEMで解析する方法で処理される例がありますが、これはボリュームの分割が多くなるのでANSYSというCAEというシステムで全部作業した方が楽だという例があります。また、自転車の設計専用のBIKE CADというシステムもありますが、形が決められたものに適用することは出来るが、レモンのようなオリジナルフレームをすぐにシステムで検討することはできないようなものがあります。

解析を前提にするとANSYS の方が便利な場合もあります。座標を意識しながらの設計は慣れるまでに時間がかかるが、フレームなら半日あればできるそうです。モデル解析だと、車輪を除いてすべてパイプ部分モデルとして解析するそうです。そして解析した結果必要な強度が出ない部分について補強を入れることで解決する手法がとられているようです。

荷重のかけ方は全体モデルで考えるときはハンドルとシートとペダルと3つに分散させるが、フレーム単体で解析する場合が多く、その場合シートのみに荷重をかけることで処理しているようです。

これは日本の自転車の乗り方がサドルに全ての荷重をかける状態であるという実状を考慮しているからであり、またスポーツ車になると若干分布が変わってきて、マウンテンバイクではクランク軸の部分とシートの部分に分散させて荷重をかけます。従って条件はより厳しくなってきます。つまりある程度実状にあわせて試験方法を調整しているということだそうです。

カーボンのばあい、解析の段階でカーボンという素材を入れずにアルミの等方性で見ています、とりあえず等方性材料で解析し応力の高い部分を探して、そこに積層材方向を変更して強度を満足する様な手法がとられているようです。かなりトライアンドエラーで解析しているようです。

以上のような内容なのであまり参考になるような情報はありませんでした、何のことはない弱点を見つけ出して補強するというのが設計手法であるということになります。少し寂しい気持ちがします、何故レモンのような考え方が出てこないのか疑問に思ったこともありましたが、メーカーのアプローチの仕方を見ていると、帰納的な問題解決の手法のみで演繹的なデザイン手法がないことがわかったように思えてきました。

参考になるサイトを紹介します。
CAE技術者のための情報サイト
構造計算 プログラム、構造計算 ソフト、材料力学
構造屋さん修行中